みなさん、こんにちは!つるぴか和尚です。
美しい生物学講義の感想、第3弾ということで書いていきます。
進化と進歩
この本では、進化と進歩という言葉がでてきます。この二つの意味は似ているようで違います。
進化:複雑多様なものへと変化すること
進歩:次第によい方、望ましい方へ進み変わって行くこと
なので、進歩とは主観的なものの見方が入っています。本書では下記のように書いてありました。
高等な生物も下等な動物もいない。すべての生物は40億年前に誕生した生物の子孫で、今なお進化している仲間である。
伝統の和菓子屋と流行りのスイーツ屋に高等も下等もない。
すごくわかりやすい例えですし、僕は他の全生物に少し親近感を湧きました(笑)同じ時代を生きる仲間と。
※メモ(進化例):水にインクを落とすと、重力が働いているだけならまっすぐ下に落ちるだけだが、水分子もインクの原子等も熱運動しているから周囲に広がる。この熱運動を使って、小さかったり薄かったりする動物は水や酸素を体中に送り届けられる。しかし、大きい動物だとこの熱運動だけでは素早く血液を送ることができないので心臓というポンプが必要になりました。
哺乳類の進化
ヒトは進化の最後の種ではない
このようなタイトルで始まる章があり、僕は正直、ずっと魚→両生類→爬虫類→哺乳類と鳥類に分かれて、哺乳類の最終地点にヒトがいるというイメージを勝手に持っていたので、驚きました。
陸上生活という点からみれば、哺乳類の中ではトカゲやニワトリなどの爬虫類と鳥類が一番進化しているのです。
そのことを表したのが本書で掲載されている下の図になります。
引用:『若い読者に贈る美しい生物学講義』|更科 功
上記の系統樹は脊椎動物から6種を選んで進化の道筋を表した系統樹です。よく目にするのはAですが、陸上生活への適応という意味ではBのほうが適しています。なぜなら、より陸上生活に適応した進化を持つのがトカゲやニワトリだからです。どういうことか。
脊椎動物の体はたくさんのタンパク質でできています。そして古くなったタンパク質は分解されて体の外に排出されます。そしてその分解の際にできるのがアンモニアという有害な物質です。タンパク質はアミノ基-NH2とカルボキシル基-COOHから水が取れたアミド結合(ペプチド結合)-CO-NH-が関係します。このペプチド結合が分解されてアミノ基がNH3 アンモニアに変わります。
まず魚類はアンモニアが生成されると鰓まで運び、鰓呼吸で吸う水に溶かして捨てます。常に水を使いアンモニアをそのまま捨てられる環境が近くにありました。
次に陸に上がった両生類は、水が少ない環境かつ生きていく上で水は貴重なので、アンモニアを魚類のように大量な水と共に捨てることができない。アンモニアは有毒で体の中に貯めておくことができないのでどうしても体外に排出しないといけない。そこで、アンモニアを尿素に作り替えるように進化しました。尿素はアンモニアより毒性が低いので、ある程度なら体の中に貯められるようになりました。
それでも両生類は水辺からあまり離れて生活することができない。その理由の一つは、卵が柔らかくてすぐに乾燥してしまうからです。カエルは乾燥しないように水中に産みます。
そこで、陸上生活に適応するためには卵が乾燥しない工夫をしなければならない。それが、羊膜で作った袋の中に水に入れ、胚(発生初期の子ども)を入れた羊膜卵で、羊膜卵を進化させた動物を羊膜類と呼び、羊膜類から進化したのが爬虫類や哺乳類です。
最後に爬虫類から鳥類が進化したのですが、この系統ではさらに陸上生活に適応し、尿素を尿酸に作り変えるように進化しました。陸上にすんでいる動物にとって水は貴重なものです。僕ら人間や哺乳類は捨てるのに大量の水を用いていますし、例えば、他の水資源(川や湖など)を汚してしまうリスクがあります。一方ニワトリやトカゲは尿素を尿酸に変えて出しています。尿酸はさらに毒性が低いだけでなく、水に溶けにくいのでほとんど水を使わなくていいのです。鳥の糞が白いのは尿酸の色です。
「ある条件で優れている」ということは「別の条件では劣っている」ということです。したがって、あらゆる条件で優れた生物というものは理論的にあり得ません。あらゆる条件で優れた生物がいない以上、進化は進歩とは言えない。生物はそのときどきの環境に適応するように進化します。生物が進化する=進歩すると考えた人は、ダーウィン以前にもたくさんいましたが、ダーウィンが初めて進化が進歩ではないことを示しました。
※メモ:ちなみに、飛行能力を獲得したのは、昆虫と翼竜と鳥とコウモリの4つの系統で独立に進化しました。翼竜とは、初めて空を飛んだ脊椎動物で、爬虫類が進化した動物。今は絶滅しています。
生物多様性
生物多様性を守る意味とは。
①生態系サービスを受けられるから②ヒトの役に立たなくてもいつか何らかの形で役に立つから③地球の生物システムが貴重だから
この3つが本書で書かれていました。自分は特に3つ目の思いが強いですかね。色んな生き物が生きられる地球、社会システムを作りたいと思っています。
ただ、生物多様性を考える時に絶対にぶち当たるのが、「地球の生物すべて対等に扱うことは難しい」。これですね。
本書でも書かれていますが。。
どうしてもヒトは多くの生き物、命を頂くようにできています。食事だけでなく、うっとうしくて蚊を殺してしまうなど、人間の都合の良いように考え殺してしまう。理屈ではなかなか決まらないのがこの問題の難しいところだなと思います。
本書でも書かれていましたが、生物多様性を考える時に、たんに種数が多いという意味だけでなく、「均等度」も大事ということです。
例は以下の通り。
A島:ヒト50人、木50本
B島:ヒト99人、木1本
この場合、種数は同じですがA島のほうが生態系の安定性が高いことになります。この均等度が低いというのは、理由として「木が一本しかない」からと言えますが、「ヒトが99人もいる」からとも言えます。一種が爆発的に増えることも均等度が下がり、生物多様性を低くするということです。現在の地球で深刻な問題としてヒトが爆発的に増加していて、地球という生態系は著しく不安定になっています。